【なんで“過去問”やりたがる?】

古来,受験生および一部指導者の間に蔓延はびこる“過去問信仰”には根強いものがあり,私のような普通の指導者を驚愕させます(笑).この言い方からわかる通り,私はその信仰に対して極めて否定的です.
もちろん,過去問を一切やるなとは申しません.ある程度はやるべきです.ただし,その目的程度をわきまえていないと,とんでもない時間の浪費をする羽目になります・・・ていうか,羽目になっちゃったおびただしい数のしかばね同然の可哀想な受験生を見て来ておりまする.
そこでこの頁では,前述した目的程度に関する私見を述べていきます.

●過去問とは
過去に当該大学で出題された入試問題現物です(笑).

●入試問題現物の作成意図
「合否判定材料」となるように作られます.要は,「合格」と「不合格」を選別するため,「力を測る」ためのものです.「力を伸ばす」ではありません!

入試問題は,あなたの実力を伸ばすために作られてはいない.
この当たり前な事実に早く気付いてください.

●それでも過去問だと言い張る人へ
スポーツやる人ならわかりますね.試合に勝ちたい.じゃあそのためにどんな練習しますか?多くは「基礎練」でしょ.いわゆる「試合形式」の練習が5割超えるなんてあり得ません.勉強も,それと同じと考えます.

●力を伸ばすには?
これに関しては,当ページおよび動画でこれでもかというくらい述べております.問題演習も行いますが,それはあくまでも“手段”.目的は基本原理の理解を深めることです.
したがって,「力を伸ばす」目的で用いる問題は,それ用に選別された素材をさらに適正レベル・ボリュームになるようアレンジされたものでなくてはなりません.様々な教材を作成して来た立場から言わせてもらいますが,入試問題現物そのままでこうした機能を果たせるものなど,間違いなく100題に1題ありません.Kなどに通っている皆さんが普段何気なく与えられて演習している問題は,そのような選別作業を通過した上で私ら職人の手で“調理”されたものなのよ,実は.
ここまで言っても「テキストの復習は1・2回サッと済ませて,あとは過去問ガンガン解くぜい」というアンポンタンくんは,もう勝手にせい(笑).

●過去問演習は何のために?
とはいえ,過去問はやるべきです.その目的は,主に次の2つであると私は考えます.

  1. 敵を知る.・・・その大学の入試傾向を知る.
  2. 己を知る.・・・今の自分の到達度を測る.

1.

  1. わりと早めの時期に,出題形式・時間,よく出る分野,難易度・ボリューム(およびその変動幅)などを頭に入れる.
  2. 直前期に,“本番慣れ”するための実戦シミュレーションとして使う(後で詳しく).

2.
今おおよそ何割くらい得点できるかを測る.“身の程”,“身分”を知って発奮材料とする.
<注>
1.a. 目的の場合には,年度をまたいで分野ごとにやる手もあります.
1.b.&2.目的の場合は,年度ごとの問題セットでやるのが基本です.

●「難易度」に踊らされるべからず
1.の調査の結果,「すんげー難しいから志望校変えよ」なんて超絶短絡思考する人が多いのですがちょい待ち!「問題難易度」と「合格偏差値」は別物よ.X大に対する対抗心=見栄で難い問題出すX△立〇〇大とかね(笑).
いちよ入試数学に関する業界のセオリー:
・問題易し目 → 合格するにふさわしい普通の生徒が受かりやすい
・難問!! → まるで出来ない子相当数と,殿上人レベルの数名が受かりやすい
“数学の学力による受かりやすさ戦略”を立てるなら,上記に従って.(もちろん,行きたい大学を志望するのが基本線ですよ~!)

●入試本番シミュレーション:前記1.b.
試験が近付いてきたら,実際の試験形式・時間配分で解答順序なども考えながら入試本番シミュレーションを行いましょう.そこで用いる素材としては,当然「過去問」を使うのが普通です.(教育課程の変更等によって過去問が使いにくくなることもありますが.)
ここで問題となるのは“試験”が終了した後です.基本的には,あまり深く追求しないでください.あくまでも上記1.2.の目的に絞ってやるのがグッド.なぜなら,追求する価値がないから,追求しても力が伸びないからです.多くの受験生が「自分が受ける大学の過去問だから」という理由だけで,何の益にもならない愚問の,赤い本に書かれた(私が読んでも)まるでイミフな珍答・珍説と悪戦苦闘して時間をドブに捨ててます.くわばらくわばら.
それから,直近の過去問を「直前入試本番シミュレーション」用に残しておくという人の噂をたまに聞きますが,直近の問題こそ,上記1.a. の目的として最重要です.ワリと早い時期に目は通すべきです.個人的には,「直前シミュレーション」は,一度手を付けたことのある過去問を使い,ズルして疑似成功体験するのが賢いと思います(笑).

●杓子定規じゃなく
過去問演習をして,「こいつは興味深い問題だぞぃ」と感じた問題があったら自身の心に導かれて深く追求してみるのはもちろん「あり」です.(T大・K大・TK大などのメジャーな大学は,その価値がある問題の比率が高いとは思います.あくまで“比較的”ですが.)
大事なこと.「どこの大学の問題は検討する価値がありますか?」等の質問はちょっと・・・.「先生,ボクは誰とケッコンしたらいいですか?」って聞かれてる気分(笑).過去問演習を行った際,そこで出会った個々の問題に対する“感触”により“自分自身で”判断です.「自分で判断なんて無理!」という人は,(キツイ言い方になってしまいますが)どのみち“自分で”過去問を徹底研究できる段階まで達していないってこと.その場合,過去問は純粋に「メリ」として片付けたらよいでしょう.
また,「過去問は何年分やったらいいですか?」と聞かれるのも困ります.「敵と己を知るのに役立つと感じる範囲でおやりなさい」としか答えようがないでーす.
(たまに,「25年前の過去問とそっくりなのが出た!」などと話題になったりしますが,それ,他大学の問題としても出てたりしますから(笑).)

●受験校以外の大学の過去問
前述の「入試本番シミュレーション」として,旧課程はおろか旧旧課程の当該大学過去問やるくらいなら,☆「問題数・時間・偏差値」が近しい他大学の過去問を使用する方がマシなケースもあり得ます.「問題特性」まで考慮した選定まで目指すと“考え過ぎ”.☆のような“デジタル情報”で手を打つくらいのなあなあな気持ちでいきましょう.
まったく別の観点で,他大学の過去問演習に効用があるケースもあります.例えばK大の問題は,良い意味でジュケンベンキョウが役立たない,型に嵌っていない問題の比率が高いので,T大など他大学を受ける人もやってみるといいですよ.頭の柔軟体操,気分転換にもなります.このように,ワザと受験校と傾向の異なる大学の問題を解いて頭の硬直化を防止するというのもまた一興です.(もちろん,「メリ」としてやれば充分です.)

●常軌を逸した問題
「入試問題現物の作成意図」の所で「合否判定材料」となるように作られると言いましたが,一部例外もあります.
上記機能を全く持たない難問が,単に世間の(難問好きのキモイ指導者の)耳目を引くため,要するに話題作りのため,あるいは作問者の自己実現のために(笑)出たりすることもあります.(あるいは“異能”と呼ぶべきレベルの生徒を獲るためなのかも知れませんが・・・)
もちろん普通の受験生は,そうした常軌逸脱問題は一切無視して構いません.もっとも,無視してよい難問か否かの判断も,ある程度力が備わっていないとできないのですが.
ただし,このような合否判定材料として不適合な難問の中にも,「力を伸ばす」ために有効な要素を内包したものがあります.そうした問題に誘導を付けるなど手を加えた上で生徒に提示することはもちろん有益ですので,私はしょっちゅうやってます(この手の作業は大得意です).何も考えず「難しいじゃろ解けんじゃろ」って嬉々として語るオヤジといっしょにしないでね.(笑)